[ワシントン 3日 ロイター] 米ニューヨーク連銀は3日、米連邦準備理事会(F
RB)の量的緩和プログラムに基づく米国債の買い入れについて、以下のような声明文を
発表した。
2010年11月3日、米連邦公開市場委員会(FOMC)は、より力強い景気回復を
促進し、インフレ率を責務に沿った水準とするため、システム・オープン・マーケット・
アカウント(SOMA)でFRBが保有する証券を拡大することを決定した。これに伴い
FOMCは、ニューヨーク連銀のオープン・マーケット・トレーディング・デスク(以
下デスク)に対し、2011年第2・四半期末までにより期間の長い国債を追加的に
6000億ドル買い取ることを指示した。
http://jp.reuters.com/article/treasuryNews/idJPnTK877676220101104FRB、国債保有の上限撤廃も
FRBは公開市場操作用口座、システム・オープン・マーケット・アカウント(SOMA)に2兆540億ドル(約165兆7000億円)の資産を保有しており、このうち米国債は8000億ドル以上を占める。FRBは保有比率の上限を各種発行済み証券残高の最大35%に制限している。追加緩和策を通じてSOMAの規模を最大2兆ドル拡大すれば、FRBは35%制限の修正を迫られる
モルガン・スタンレーのストラテジスト、イゴール・キャシン氏とティン・チュイ氏は、FRBが保有比率制限を50%程度に引き上げ、さらに国債を購入した場合、現在35%の上限に近い国債が値上がりし、投資家は利益を確保できる可能性があると指摘する
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/101103/mcb1011030505035-n1.htm米FRB、49兆円の追加量的金融緩和へ=資産バブル懸念も
従来の国債再投資含めると73兆円規模に-
【2010年11月4日(木)】 - FRB(米連邦準備制度理事会)は3日のFOMC(連邦公開市場委員会)会合で、景気回復の遅れとディスインフレ(物価上昇率の低下)からの脱却を目指して、長期国債の買い取り規模を6000億ドル(約48兆6000億円)拡大することを柱とした追加量的緩和策を発表した。
FRBでは、従来からの"QE(Quantitative Easing) Lite"と呼ばれる、2500億‐3000億ドル(約20兆‐24兆円)の長期国債への再投資を加えることで、量的金融緩和の規模は8500億‐9000億ドル(約69兆‐73兆円)へと、一気に3倍以上に拡大することになり、長期金利の低下を一段と促し、景気を刺激する効果が期待できるとしている。
これまで、FRBは景気回復のペースが依然、鈍化していることに加え、新たに、ディスインフレ(物価上昇率の低下)の状況に陥ってデフレ懸念が起きてきたことから、小規模な量的金融緩和策(長期国債への再投資)を実施してきた。
これは、FRBが保有するエージェンシー(政府機関ジニーメイと政府系住宅金融会社)債と、フレディマック(米連邦住宅貸付抵当公社)とファニーメイ(米連邦住宅抵当金庫)が債務保証しているMBS(不動産担保証券)の償還金を使って、同様に満期が到来する長期国債に匹敵する額の新しい長期国債に再投資(買い取り)するものだ。
しかし、FRBの保有国債のうち、来年に満期が来るのは約2000億ドル(約16兆2000億円)相当のため、現在の米国債の保有残高2兆0540億ドル(約166兆円)の約10%に過ぎないことを考えると、再投資してもその効果には限度があると見られていた。
■30年国債はほぼ買い取り対象外に
今回の追加緩和策では、FRB傘下のニューヨーク連銀が公開市場操作(オペ)を通じて、毎月750億ドル(約6兆1000億円)のペースで、平均5-6年の残存期間の長期国債を来年6月末までの8カ月間にわたり買い取ることになる。毎月の買い取り額は月初めの8日目に公表される予定だ。
また、MBSの償還金を使った従来からの長期国債への再投資についても来年6月末まで実施され、月平均で約350億ドル(約2兆8000億円)のペースで再投資が実施されるとしており、今回の追加分の750億ドルを加えると、毎月の長期国債の買い取り額は1100億ドル(約8兆9000億円)になる。
ニューヨーク連銀によると、長期国債の買い取り比率は、残存期間が2年半~10年までが86%と大半を占め、10年超~30年はわずか6%、また、1年半~30年のTIPS(物価連動債)は3%となっている。
FRBが買い取り対象の国債の残存期間が平均5-6年になるとしているのは、主として住宅ローン金利の引き下げを促すことに重点を置いているためだ。
しかし、30年国債を多く保有している投資家にとっては、今回の追加措置は裏目に出る可能性があるとして批判的だ。FRBが長期国債の買い取りを積極的に進めれば、インフレを引き起こす可能性が高まり、その結果、30年国債を保有す投資家はインフレ・リスクに直面することになるからだ。
また、
ニューヨーク連銀はオペのために管理する口座「システム・オープン・マーケット・アカウント(SOMA)」の35%ルールを弾力的に運用することも決めている。これは特定の銘柄の保有上限をポートフォリオ全体の35%までと決めているが、より運用面で魅力的な銘柄を多く買い取れるように配慮した措置だ。
■NY株式市場、後場から値戻し=発表直後は下落
ニューヨーク株式市場では、今回の追加金融緩和策の発表直後は、6000億ドルの追加規模はアナリスト予想とほぼ一致し、すでに市場が織り込み済みだとして嫌気され、主要株価指標のダウ工業株30種平均は、一時、前日比66ドル(0.6%)安の1万1124ドルにまで軟化した。
しかし、後場になって見直し買いの動きが強まった。市場では、FRBは金利を引き下げて借り入れを増やし、消費を拡大するために、金融緩和に本腰を入れる姿勢を一段と明確に打ち出したとの見方が強まり、ダウは結局、前日比26.41ドル(0.2%)高の1万1215.13ドルと、金融危機がピークに達した2008年9月以来2年2カ月ぶりの高値で引けている。
市場では、当初、FOMC会合後に発表される声明文の中で、FRBは長期国債の買い取りについては経済情勢を見ながら毎月見直すとの文言が使われると予想していた。
しかし、実際には「定期的に新しい情報に基づいて長期国債の買い取りペースや買い取り規模を見直す」としているものの、明確に、「来年6月までに月750億ドルのペースで、新たに6000億ドルの長期国債を買い取る」と述べている点を評価、市場に対する強いメッセージだとしている。
債券市場では、10年国債は、債券価格と反対方向に動く利回りは前日と変わらずの2.59%だったが、2年国債は買われ利回りは前日の0.52%から0.35%に低下した。それとは対象的に、買い取り対象から外れた30年国債は売られ、利回りは前日の3.93%から4.06%に上昇。為替市場では、ドルは主要通貨バスケットに対し、前日終値比で7%下落した。
■資産バブル懸念強まる=FRB議長、懸念は過大と否定
一方、市場では一部のFRB関係者を含めて、今回の6000億ドルの追加金融緩和措置は、市場に大量の通貨を供給することでインフレを再燃させるばかりか、ヘッジファンドなどの投機筋が低コストで調達した大量の資金を使って、株式や債券、国債商品などの市場で投機に走り、その結果、資産価格のバブルを引き起こす懸念があるとの批判も強い。
これに対し、ベン・バーナンキFRB議長はワシントン・ポスト紙への4日付寄稿文の中で、金融危機に直面していた昨年3月に打ち出した1兆7000億ドル(約138兆円)規模の最初の量的金融緩和策はインフレを引きこしていいないと指摘。
その上で、同議長はFRBの今回の景気支援策がインフレを引き起こすとの懸念は誇張された見方だとして否定的な考えを明らかにしている。
また、同議長は、将来の出口戦略についても、「我々は必要な準備をすべて整えており、適切な時期がくれば、市場から資金を吸収するために必要な手段を講じることができると確信している」とも述べている。
長期国債の買い取りの効果については、ニューヨーク連銀のウィリアム・ダドリー総裁は10月初めの講演の中で、当時は5000億ドル(約40兆5000億円)規模の追加買い取りを主張していたが、それでも政策金利を0.5‐0.75%ポイント引き下げたのと同じ効果を生じさせると指摘している。その結果、住宅ローン金利が低下し、企業の資本調達コストも低下し、住宅や株式などの資産価値を支えることになる、と述べている。
ただ、エコノミストはFRBの政策目標である雇用の最大化で失業率を引き下げられるかについては懐疑的だ。米投資分析大手ムーディーズ・アナリティクスの主席エコノミストのマーク・ザンディ氏は、今回の追加金融緩和措置がなければ2011年末の失業率は9.9%に上昇するが、それでも現在と同じ9.6%の維持がやっとだ、と冷ややかな見方だ。
また、同氏は2011年の経済成長率は0.3%ポイント押し上げられて、2.7%になると予想しているが、仮に+3%程度の経済成長ができても人口の自然増を吸収して失業率の上昇を食い止めるのが精一杯だ。失業率を1%ポイント引き下げるには+5%の成長率が必要といわれる。
■政策金利、予想通り据え置き=21カ月連続
また、この日のFOMC会合では、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標も市場の予想通り、「for an extended period」(長期にわたって)の文言を残した上で、現行の0%~0.25%のレンジに据え置くことを決めた。FRBは2008年12月以降、政策金利を据え置き続けており、これで21カ月連続となる。
前回9月21日のFOMC会合後に発表された声明文では、景気認識については、「景気回復のペースは従来の見通しよりも短期的には一段と緩慢になる可能性が高い」と、景気の2番底リスクに対する懸念が示されていた。
また、10月12日に公表されたFOMC議事録(9月21日開催分)でも、同様に、多くの委員はリセッション(景気失速)に再び陥るとは見ていないものの、失業率が9.6%に達し、今後も高水準の失業率が続く見通しから、「景気悪化リスク(potential negative shocks)を受けやすい状況にある」と、景気悪化懸念を示している。
今回発表された声明文では、景気認識は「生産活動と雇用の回復ペースが依然として鈍化している」とし、前回からは変わっていない。
しかし、今後の見通しについては、「FOMCは、物価の安定が維持され、リソース(企業の設備稼働率や雇用市場など)の稼動水準も徐々に高まっていくと見ているが、物価安定と最大雇用の確保という2つの目標の達成に向けての進展は失望感を感じるほど極めて遅い」と、前回よりも一段と懸念を強めている。
■デフレ懸念、変わらず
また、インフレに対する認識は、前回の声明文では、「現在のインフレ率は、FRBが使命としている物価の安定と雇用の最大化と矛盾せず、FOMCが長期にわたって望ましいとする水準をやや下回っている」とし、ディスインフレの状況に陥っていることを明確にしたが、これは、今回の声明文でも変わっていない。
FRBは7月に公表したFOMC議事録の中で、長期のインフレ目標をPCE(個人消費支出)物価指数で前年比1.7~2.0%としている。
しかし、今月1日に発表された9月の個人所得・支出統計では、PCE物価指数は前年比1.4%上昇、また、FRBが重視しているコアPCE物価指数(値動きが激しいエネルギーと食品を除く)も同1.2%上昇と、8月の1.3%上昇から減速している。このデフレ懸念は裏を返せば、景気回復が遅れて2番底になる懸念を示すものといえる。
■カンザスシティ地区連銀総裁、国債買い取りに反対
また、今回も、カンザスシティ地区連銀のトーマス・ホーニグ総裁だけが現行の"ゼロ金利"政策は長期的には景気や金融市場に対するリスクを高めるとして反対票を投じた。
同総裁は今回も、「長期にわたり、超低金利政策を続ければ、FRBのバランスシートを悪化させるばかりか、長期のインフレ期待を高め、その結果、経済を悪化させる可能性がある」として反対している。同総裁の反対は1月27日のFOMC会合以来7回連続となる。
FRBのバランスシートはすでに2兆3000億ドル(約186兆円)にまで膨らんでおり、これはリセッション(景気失速)に入った2007年12月時点の約3倍となっている。
また、同総裁は、今回、長期国債の買い取りの拡大については、メリットよりもデメリットの方が大きくなるリスクがあるとして、長期国債の買い取りにも反対している。(了)
NY連銀がオペのために管理する所謂SOMA(System Open MarketAccount)が保有する市場性証券の動向と関連していることを明らかにする